2015年07月31日
第6回 在庫処分時にリーガルの観点で押さえておくべきこと
『どのタイミングで在庫処分するのがベストなのか?』
について、説明しました。
このためには、在庫の現在・将来価値を正しく把握することが非常に重要であり、
それを可能にする分析ツール(例:弊社提供ツール トレンドナビ)の整備や、
管理会計への落とし込みを徹底していくことが必要です。
これまで、在庫処分に纏わる論点、
・オペレーション体制
・ブランド毀損・販路コントロール
・在庫価値判断
といったポイントをご紹介して参りました。
これらの観点がクリアされてくると、
大抵の企業においては、定期的な在庫処分が可能となってくるのですが、
一方で、守り(管理)の論点も、追加で検討が必要になるケースがあります。
具体的には、
・法務
・税務
・人事
といった論点です。
今回はそのうちの1つ、法務観点での押さえるべきポイントをご紹介します。
関連法:廃掃法
在庫処分の際の論点となる関連法の1つとして、
「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(通称:廃掃法)があります。
この法案は、
「廃棄物の排出を抑制し、及び廃棄物の適正な分別、保管、収集、運搬、再生、処分等の処理をし、
並びに生活環境を清潔にすることにより、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的とする」
法案です。
詳しくは、下記環境省のサイトをご参照下さい。
https://www.env.go.jp/recycle/waste_law/kaisei2010/attach/law22_34c.pdf
この法律は、「廃棄物」に関して定めたものであり、
在庫処分は、有価の商品売買が基本ですから、
原則対象とはならず、基本的には意識しなくて良いのですが、
場合によっては、「廃棄物」と見做されてしまう可能性があり、注意が必要です。
それが、下記にご紹介する逆有償という問題です。
逆有償とは?
「有価での売却代金」 < 「輸送費」 の場合、
産業廃棄物と見做される場合があります。
即ち、売却側に経済的損失が生じる場合においては、
廃棄物に該当すると見做される可能性があるのです。
これを一般的に逆有償と呼称し、産業廃棄物と見做される可能性があり、
その際は、廃棄物として適法な処理(マニフェスト提出等)を行う必要があります。
倉庫スペース等を空けることを目的とした在庫処分の際など、
非常に安価で在庫処分する際には注意が必要、と覚えておくと良いです。
なお、平成25年3月29日付けの通知(環廃産発第 130329111号)では、
「引渡し側に経済的損失が生じている場合であっても、
(中略)、廃棄物に該当しないと判断しても差し支えない」
との表現で通知が出されております。
(https://www.env.go.jp/recycle/waste/reg_ref/tuuti.pdf )
即ち、廃棄物に該当するかどうかは、具体的事情を鑑みて、
総合的に判断することが必要となる、と言えます。
しかしながら、自治体によっては逆有償の場合は廃棄物と判断する等、
見解が異なる場合もあるので、所管自治体に事前相談することが一番安全と思われます。
ですから、迷った・不安な場合は、
所管自治体や弁護士等に確認しながら、
在庫処分を進めると良いです。
以上、在庫処分の際によくある法務上の論点をご紹介しました。
その他、税務上、人事上の論点もありますので、次回以降ご紹介したいと思います。
※ご注意
本コラム内容は、法務上の確からしさを保証するものでは御座いません。
実際の在庫流動化の際には、行政当局・弁護士等にご相談のうえ、実施下さい。